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Posted by ミリタリーブログ at

2018年08月22日

サイバーセキュリティ談義 〜YPD外伝〜

この物語は、ご当地LE「横田広域警察:YPD」の世界観を深めるためのフィクションであり、実在の人物、組織等とは一切関係ありません。
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201X年 東京都某所
YPDで勤務する職員にとって、情報保全に関する教育を受けるのは当然であろう。より実戦的なサイバーセキュリティについて知識を深めるというお題目で、某情報組織からブリーファーが派遣され、飾り気の一切ない地味な資料を用いながら一生懸命に説明していた。
「…不破栄の携帯端末から大陸にデータが送信されているのは紛れもない事実です。また、特定の企業を誹謗中傷したい訳ではありませんが、不破栄の器材を基地局に使っているSon'sの携帯が、情報漏洩の原因となっていることも確認されています。我が国では私企業への干渉は経済活動への積極介入と見なされるため、規制が難しい現状ですが、…正直言って、こういった面ではアメリカが羨ましいです。」
受講者の何人かは深く頷き、同意を示した。
「米国は不破栄を締め出しましたね。私企業相手に訴訟大国であんな大胆な行動に出たのは、明確な証拠を掴んだからに他なりません。さて、この中で不破栄もしくはSon'sの携帯を使っている人はどれくらいいるでしょうか…いえ、手は挙げなくて結構です。私物の携帯で仕事の話は絶対にしないでくださいね。」
情報漏洩が原因で大切な仲間を失った捜査官達は、熱心に聞き入っている。
「おいKO、そんな公開情報ベースばかりの教育がここで活かされると思っているのか?」
受講者の中から野太い声が響いた。省庁間の枠を超えてもっと情報共有を、と今回のブリーフィングを企画した捜査官だった。出向元で先輩後輩の関係らしい。
「ここの人間に教えるべきは生の情報と危機的現状だ。大半の人間がクリアランスを持っている。ぶっちゃけてもいいんじゃないのか、それとも警察ナメてんのか?」
KOと呼ばれたブリーファーがニヤリと笑った。
「わかりました。…それでは皆さん、早いですがここで昼休みにします。この時間を使って今からお配りするフォームを記入するのと、表紙に書いてあるサイトに部外系ネットワーク端末を使ってアクセスし、セキュリティテストを受けておいてください。予定していた内容より分量が多いので、次の集合は1245とします。質問がなければ解散」
ブリーファーの目には力がこもっている。スイッチが入ったのか、普段職場で使っているであろう硬い口調になりつつあった。
冊子状になった書類が手早く配られた。内容を見る限り、同盟国の安全にも影響するような事項にも触れるらしい。一同は息を呑みつつ、神妙な面持ちで記入を始めた。
大規模なガサ入れの情報が不法分子に漏れ、突入チームに壊滅的被害を受けて以来、YPDでは保全、特にサイバーセキュリティに力を注ぐようになった。誰もが面倒がっているが仕方がない。サイバー空間は新たな戦いの領域なのだ。
その日の午後、漏洩は我が国の法律と米スパイ防止法で処罰されるという前置きを踏まえ、濃密な講義が行われた。
「万が一、教育内容を漏洩してしまった場合はFBIに捕まる前に自首してください。その方がご自身のためです。」笑えないブラックジョークのせいで、受講者の多くはFBIの存在を普段より意識してしまっていた。

夕方になり、参加した全員が得体の知れない疲労感と焦燥感に包まれながらぞろぞろと会議室から退出した。何人かが携帯電話置き場に直行しアプリを早速削除している様子を見て、ブリーファーは苦笑していた。
一般人の知らないところで戦争は既に始まっている…勝ち目のない戦いにどう勝つのか、彼の仕事は一筋縄ではいかない。  
タグ :YPD


Posted by m14gbbshooter at 22:00Comments(0)