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Posted by ミリタリーブログ at

2017年11月20日

横田広域警察24時〜Undercover officer “Liz” 〜①


散弾銃の銃架には常に1挺分の空きがあった。使用者欄には「Liz」と書き殴ったような署名が残されている。
捜査課の情報員で日系ハーフの元米軍人、小柄で童顔な黒髪碧眼の美少女…の筈だったが、リズはいささか獰猛だった。潜入捜査官にして突入作戦時には自らポイントマンを志願するウォーモンガー…見た目からは想像もできない活躍ぶりだった。潜入捜査官という仕事のせいか署内で仲間と打ち解けた様子を見せることはなく、素顔を知る者は少ない。
リズはYPD史上最悪の突入作戦に参加したメンバーで唯一の生き残りだった。

ほんの数年前、情報部隊の一員としてアジア某国に派遣されていたリズは、情報収集のためチームメイトと共に郊外の道路を移動していた。装甲ハンビーに揺られながら、リズはドアの隙間から見える褐色の地面を眺めていた。顔を上げて防弾ガラス越しに青空を見上げた瞬間、シュッという音が聞こえた。とてつもなく嫌な予感がした。「RPG!」という絶叫の直後、前を走っていたハンビーが吹き飛ばされ、鉄と炎の塊になっていた。続いてリズの乗るハンビーにもRPGが飛んできた。辛うじて直撃は避けられたがタイヤを破壊され、立ち往生を余儀なくされた。「外に出て応戦しろ!」分隊長が吼える。無線で救援を要請したが、到着まで持ち堪えられるか…。
敵は手強かった。銃弾のシャワーが襲いかかり、あっという間にチームメイトは敵弾に倒れた。分隊長も深手を負っている。「俺がやられたら仇を取ってくれよ」笑いながら縁起でもないことを言っている。そこにとどめとばかりにRPGが撃ち込まれた。
爆風で吹き飛ばされ、リズは朦朧とした意識の中、近づいてくる敵を認識した。
地面に横たわるリズを見下ろしながら、ゲリラの男が言葉を発した。「Go home, child. You are free.」蔑むような顔でニヤリと笑い、男は立ち去った。リズの意識はそこで途切れた。
気付いた時には病院のベッドの上にいた。チームは全滅、自分だけが救出されたと知った時には声すら出せずに泣いた。人員の殆どを失った部隊は任務を中止し、リズは帰国することになった。


トランジットの横田基地で第5空軍司令部の知り合いに呼ばれて顔を出すと、「日本での任務に興味はないか?」と聞かれた。原隊に戻れば、きっと自責の念で押し潰されてしまう…リズは二つ返事で引き受けた。新編される日本の公安組織への出向。よくわからないが、プレジデント・オーダーなのだという。「明日また来てくれ」と告げられ、“Kanto Lodge”のルームキーと機内に積んでいた筈の手荷物を渡された。異様な手際の良さだった。



翌朝、A2オフィスに顔を出すと制服を着たチーフが待ち構えていた。応接室に通され、新しいIDと紺色の制服を渡された。真新しいバッジには「横田広域警察」と刻まれている。日本語なら簡単な読み書きと挨拶ぐらいならできる。リズは気分が落ち着くのを感じた。何でもいい、あの悪夢を忘れさせてくれるなら何でもやってやる…。

つづく
  
タグ :雑談YPD


Posted by m14gbbshooter at 23:41Comments(0)